「もう気にしないようにしよう」
そう決めたのに、
また考えている。
忘れようとするほど浮かんでくる。
考えないようにするほど、そこへ戻ってしまう。
そんなことがあります。
心理学には、思考を強く抑えようとすることで、かえってその考えが浮かびやすくなることがある、という研究があります。
有名なのが、心理学者ダニエル・ウェグナーらの「白熊」の実験です。
「白熊について考えないようにしてください」
と言われると、
頭では白熊以外のことを考えようとしながら、同時に、
「今、白熊を考えていないかな?」
と確認する必要が出てきます。
つまり、
考えていないか確かめるために、そのことを探している。
日常の、
「気にしないようにしよう」
「忘れよう」
「緊張しないようにしよう」
にも、似たことが起こる場合があります。
ただし、
「考えないようにしたら必ず逆効果になる」
という意味ではありません。
また、
「出てきた感情は全部受け入れればいい」
「感じ切れば消える」
という話でもありません。
そら音処で大切にしているのは、その手前です。
まず、「あるもの」を追い出さない
たとえば、
「また失敗したらどうしよう」
という考えが何度も浮かんでいるとします。
そこで、
「そんなこと考えちゃダメ」
「前向きに考えよう」
「もう気にしない」
と、すぐに追い出そうとするのではなく、
まず、
「そっか。今、私は失敗することが怖いんだね」
と見てみます。
そら音処では、これを
「小さな声をきく」
と呼んでいます。
ここで大切なのは、
「怖いなら、やめたほうがいい」
と結論を出すことではありません。
怖さを、そのまま行動の答えにするわけでもありません。
ただ、
今、自分の中にこれがある。
と確認します。
「怖い私」と「進みたい私」が、同時にいてもいい
自分の中を見ると、ときどき矛盾したものが出てきます。
怖い。
でも、やってみたい。
もう関わりたくない。
でも、大切にしたい。
腹が立つ。
でも、嫌いになったわけではない。
そら音処では、どちらかを消して「本当の気持ち」を一つに決めるより、
どちらも今の自分の中にあるものとして見ていきます。
「怖い」がいるから、
「進みたい」は嘘。
ではありません。
「進みたい」がいるから、
「怖がってはいけない」
でもありません。
一つずつ見えるようになると、
「私は今、何に反応しているんだろう」
「何を守ろうとしているんだろう」
「そのうえで、私はどうしたいんだろう」
と、少しずつ見られるものが増えてきます。
追い出さなくても、言うことを全部聞かなくていい
「気持ちを大切にする」と聞くと、
感情のまま動くことのように思えるかもしれません。
でも、そら音処でいう「小さな声をきく」は、そういうことではありません。
たとえば、
🐷「怖いよ」
という声に、
「怖がっちゃダメ!」
と言わない。
でも、
「怖いなら全部やめよう!」
とも、すぐには決めない。
まず、
「そっか。怖いんだね」
と、その声がそこにいることを認める。
それから、ほかの声や、相手のこと、現実の状況も一緒に見ていきます。
「気にしない」を目指すより、次の一手を選べる状態へ
そら音処で心を見る目的は、
何も気にならない人になることでも、
ネガティブなことを考えなくなることでもありません。
気になっているなら、
「気になっている自分」を置いていかない。
怖いなら、
「怖がっている自分」を小さくしない。
そのうえで、
「では、今の私はどうする?」
を考えられるところまで戻ってくる。
それが、そら音処でいうチューニングです。
考えないようにしようとして、
かえって何度も同じことが浮かんでくるとき。
「いつまで気にしてるの?」
と自分を責める前に、
まず、
「そっか。今、これが気になっているんだね」
と見てみる。
そこから始めると、
今まで見えていなかったものが、少しずつ見えてくることがあります。